あるサイクリストは最近、「北京の長安街がまた渋滞している!」とため息を漏らした。ただ、渋滞していたのは自動車ではなく、自転車だ。
長安街でナイトサイクリングがブームに
今年の夏、長安街を走るサイクリストの動画をスマホで撮影して、編集するサービスを提供している馮さんはとても忙しい毎日を送っている。
北京市の建国門から復興門まで約6キロの区間が今年の夏、最も人気のサイクリングコースとなっている。日中は暑さが厳しいため、夜にサイクリングする人が多い。そして、サイクリングが人気となっているのを背景に、馮さんが提供しているような追跡撮影サービスのニーズも高まっている。
サイクリング人気をビジネスチャンスととらえた馮さんは、サイクリストに追跡撮影サービスを提供するようになって2年になり、料金は1人当たり299-499元(1元は約20.6円)という。「今年の夏はほぼ毎日、1日当たり30-40件のオーダーが入っている。撮影に費やす時間は1件当たり30—40分」と馮さん。
プラットフォームのデータを見ると、ナイトサイクリングが人気になっていることがうかがえる。例えば、ECプラットフォーム「美団」のシェア自転車のデータを見ると、7月以来、夜間の利用数が最も多い中国の都市は北京、上海、成都、深セン、武漢などとなっている。北京だけを見ると、午後6時から10時までの間に利用したユーザーの利用時間は前年同期比で約15%長くなっている。
これまでは都市を気ままに散策して没入型体験を楽しむ「シティウォーク(city walk)」が人気となっていたものの、今では「シティライド(city ride)」が人気となっており、長安街のナイトサイクリングのように、自転車で都市を散策というのが新たなスタイルとなっている。
自転車の売れ行きも好調に
サイクリングが人気となっているのを背景に、自転車の売れ行きも好調だ。中国自転車協会の統計によると、2023年、中国の1千元以上の中・高価格帯の自転車の生産量が前年比15.1%増の1215万台に達した。1千元以上の自転車が総生産量に占める割合は24.9%で、前年比で4.3ポイント上昇した。高級スポーツ自転車市場の成長率も10%以上に達した。
北京のホワイトカラーの周さんは2023年にサイクリングにはまり、今では2台所有している。どちらも外見や色が気に入って購入したといい、カスタムパーツなどを入れると約15万元使ったという。
北京市民の来さんはサイクリングをするようになって4-5年になり、これまでに合わせて約20万元使ったという。
自転車本体のほか、サイクリングアイテムやカスタムパーツ、メンテンナンスなどにも多くのお金がかかる。
それでも、取材に応じたサイクリストは皆、「自分も周りのサイクリストも身の丈に合った範囲で楽しんでおり、高級志向の人は少ない」とした。