中国でドローンや空飛ぶクルマなどを活用する「低空経済」が市場を拡大し、注目を集めている。北京で16日まで4日間開かれた中国北京国際科学技術産業博覧会では、ドローンの展示エリアに多くの来場者が詰めかけた。
15日、中国北京国際科学技術産業博覧会で展示されたVTOL(垂直離着陸型)ドローン。(北京=新華社記者/張漫子)
不動産開発などを手がける北京中関村延慶園投資発展の趙有旺(ちょう・ゆうおう)副総経理によると、ドローンメーカー20社が計29モデルを展示。会期中は連日、開始から終了まで来場者が絶えず、ドローンへの関心の高さがうかがえた。
ドローンの活用シーンはさまざまな分野に広がっている。広東省広州市で15日、小型ドローンが市内の受験生4人に華南理工大学の合格通知を届けた。所要時間はわずか30分。大型ドローンと異なり、短距離配送を効率よくこなす。
ドローンを開発したのは、料理の宅配など生活関連サービスを手がける美団。担当者の任翰(にん・かん)氏は「氷点下20~50度、中程度の雨や雪、強風、薄暗がりでも安定的に飛行できる。国内97%の都市の自然環境に適応できる」と説明。5キロ以内の距離であれば、重さ2・4キロの荷物を10分足らずで配達する。6月末現在、上海や広州、深圳などの31路線で活躍。オフィスや社区(コミュニティー)、観光地、キャンパス、公園、図書館などをカバーし、配達件数は累計30万件を超える。
広東省深圳市の人才公園で観光客にフードデリバリーサービスを提供するドローン。(2023年9月20日撮影、深圳=新華社配信)
北京市延慶区科学技術委員会の陳昕(ちん・きん)副主任は、想像でしかなかった「空中都市」が急速に現実化しつつあると指摘。万里の長城の麓で無人航空モデル区の建設が進んでいるほか、文化財や作物の保護、火災の緊急対応、森林や河川、湖の巡視などにもドローンが活用されていると話した。
中国の低空経済の規模は昨年、5千億元(1元=約22円)を超えた。2030年には2兆元に達するとみられている。
市場調査会社、賽迪顧問(CCIDコンサルティング)の楊嶺(よう・れい)氏は、低空域での活動が増え、スマート物流やスマート交通、緊急巡回、生態モニタリングなど活用シーンが広がることで、インフラ投資の成果も徐々に表れてくると指摘。中国の低空経済は今後数年で、飛躍的な成長を遂げるとの見方を示した。