広東省深圳市坪山区の燕子湖国際会展中心から福田中央商務区(CBD)へ向け飛び立つヘリコプター。(1月10日撮影、深圳=新華社記者/毛思倩)
千メートル以下の低空域では何が可能か? 朝の通勤ラッシュ時に「空飛ぶタクシー」で通勤する、宅配便をドローンで配達する、地上の渋滞を回避して救急ヘリコプターで患者を搬送する…。中国各地で現在、低空域の飛行活動を活用する「低空経済」が加速している。中国民用航空局のデータによると、国内の低空経済の規模は2023年で既に5千億元(1元=約22円)を超え、30年には2兆元に達する見込みとなっている。
北京、広東、安徽、山西、四川など約18の省・自治区・直轄市は今年1月以降、低空経済を積極的に発展させるための各種政策を発表し、戦略的新興産業として発展、拡大している。
広東省深圳市で、海産物を積んで大鵬新区から竜崗区へ飛ぶ豊翼科技(深圳)の無人機。(2月5日、ドローンから、深圳=新華社記者/毛思倩)
重慶市の竜興通用空港で4月30日、刺激的でロマンチックな「空中結婚式」が行われた。新郎の王鵬(おう・ほう)さんは「こんな大切な日に初めてヘリコプターを体験した。従来の挙式スタイルとは異なり、とても記念になる」と感想を述べた。同市は航空エンジンや無人機完成品の開発、製造から、運営サービス、衛星の応用まで、物流配送、都市管理、空中通勤、救急救助などのシーンを網羅した全産業チェーンの構築を加速させている。
重慶市でヘリコプターに乗り「空中結婚式」を挙げる新郎新婦。(4月30日撮影、重慶=新華社記者/楊仕彦)
「無人機の都」深圳市では、低空経済に関するソフトとハードが徐々に整備されている。同市南山区人才公園では、観光客は美しい景色を楽しむ以外に、無人機によるフードデリバリーも体験できる。
北京市は多様な応用シーンの創出に力を入れている。ゼネラルアビエーション(一般航空)による消防、消火、巡回検査などについて、市全域での実証事業を推進する。北京大興国際空港と河北省雄安新区、北京首都国際空港と天津市を結ぶ通勤用の航空路線を開設し、分離式の空飛ぶクルマによる都市間通勤と市内送迎を組み合わせた新業態も模索する。同時に、延慶、平谷、密雲各区で、低空観光や飛行体験などの産業を開発する。
13日、遼寧省の瀋陽無距科技の農業用無人ヘリコプターX60。(瀋陽=新華社記者/楊青)
上海市は市内航空路や都市間航空路、河川・湖・海上航空路などの開通に積極的に取り組んでいる。上海市経済情報化委員会の張英(ちょう・えい)主任は、同市のような超大都市にとって低空経済発展の意義は大きいと指摘。新興産業を育成し経済成長を促進する戦略的ニーズである一方、交通渋滞、物流コストの高止まり、環境汚染など大都市特有の課題に積極的に対応する現実的ニーズでもあると述べた。
航空救急救助演習を行う重慶市航空応急救援総隊。(資料写真、重慶=新華社記者/王全超)
中国電子情報産業発展研究院未来産業研究センター(無線電管理研究所)の周鈺哲(しゅう・ぎょくてつ)副主任は低空経済産業について、情報通信や交通物流、文化観光との融合を加速させ、スマート物流、スマート交通などの新たな応用シーンを育成し、低空観光や低空輸送などの新業態、新モデルを整備すると見ている。中国の市場調査会社、賽迪顧問(CCIDコンサルティング)のスマート装備産業研究センター責任者、楊嶺(よう・れい)氏は、低空飛行活動の増加に伴い、低空インフラ投資の成果も徐々に表れているとし、中国の低空経済は今後数年間、急速な成長傾向を維持するとの見方を示した。
湖南省長沙市にある長沙県低空経済応用シーン制御指揮センターで、ドローンの離着陸を遠隔操作し飛行の安全を監視する技術者。(5月7日撮影、長沙=新華社記者/陳思汗)